Compromise の2つ意味を整理|混乱せずに使えるようになる
ほとんどの日本人は、「Compromise=妥協する」と覚えますが、ネイティブが同様によく使うのが、
- His reputation has been compromised.(彼の名声は傷つけられた)
- The data has been compromised.(データが漏洩した(損なわれた))
のように、「傷つける(能動態で)」「危険に晒される(受動態で)」などの訳が当てられるものです。
刑事モノなどではむしろ「損なわれる」の用法の方がやや頻繁に聞くかもと言った印象です。
しかし、なぜ同じ compromise という一つの単語が、
「妥協する」と「傷つける」という一見「反対」とも取れる意味を持っているのでしょうか。
この記事では、
・語源
・中世から現代の用法の変遷
を通して、2つの意味の繋がりを紐解いて行きます。
Compromise の語源
辞書を引けば
- 「妥協する」
- 「傷つける」
と出てくるCompromiseですが、語源はどうなっているのでしょうか。
com-(共に)+ promittere(約束する、送る)= 「共に約束する」
語源辞典 Etymonline によると、compromise はラテン語 compromittere に由来します。
この単語は
- com-(共に)
- promittere(約束する、送る)
の組み合わせで、もともとは「共に約束する」「仲裁者の判断を受け入れることを誓う」という意味でした。
「損なわれる」「危険に晒す」はどう生まれたか
Utah大学の法学サイトによると、compromise の意味は以下のような段階を経て変化していきました。
第一段階(古代〜中世)「共に誓う」→ポジティブ(現代ではあまり使わない)
ラテン語 compromissus(compromittere の過去分詞形)は、
「仲裁者の決定を受け入れると約束する」
ことを意味しました。
つまり
「争いをおさめるための相互の約束」
です。ここではまだ肯定的な意味しかありません。
第二段階(1500年代)「交渉の上歩み寄る」→ポジティブ(用法は現代も存続)
やがて「仲裁者の存在」が薄れ、単に
「交渉を重ねてお互いに譲り合う」
行為全体を指すようになります。
この段階で現在の「妥協する(concessionを交わす)」という意味が定着します。
第三段階(1600〜1700年代)「一部失いつつ譲歩する」→ややネガティブ(用法は現代も存続)
しかし、譲歩には常に
「何かを失う」
「理想を少し曲げる」
という側面がつきまといます。
そのため、17世紀後半には
「不本意な妥協によって、自分の立場や名誉が損なわれる」
というネガティブなニュアンスが生まれました。
第四段階(現代)「傷つける」「損なわれる」→完全にネガティブ(現代に発生)
そして現代、
「Reputation(名声)、Data(データ)、System(システム)が、Compromised(損なわれる)」
など、締結事の有無にかかわらず、
ネガティブな「損なわれる」の部分だけが生き残った用法:
例:The security system was compromised.(セキュリティシステムが侵害された)
が生まれたわけです。
そして
- 「妥協する」
- 「傷つける」
が2大用法として残ったという事になります。
出発点が「誓う(共に約束する)」であるだけに、
語源を調べてもなお学習者を戸惑わせる一語と言えそうです。
共通点は、「完全な状態を保てなくなる」「守り切れない」
一見まったく違う意味に見えますが、両者の根底には共通点があります。
それは
「完全な状態を保てなくなる」
という点です。
- 妥協する:理想や主張を100%保てない
- 損なう・危険に晒す:機能や信用を100%保てない
どちらも
- 「完全さが欠ける」
- 「守りきれない」
の意味を維持しています。
したがって、
「compromise=完全性を少し手放す」
と捉えると、どちらにも柔軟に対応しやすいかもしれません。
覚えたら使っておこう|第二言語習得理論「内在化」「自動化」のすすめ
英単語は暗記で終らせない事がスキルアップの近道です。例えば、
「信頼を損なう」は、
Compromise one’s trust
などと表現する事ができます。
