非ネイティブだからこそ活用したい!英語で分かりやすく伝えるコツ


はじめに:なぜあなたの英語は聞いてもらえないのか

ビジネスや日常生活で英語を使う際、「話し方講座」や「話し方が9割」といった日本語のノウハウにすら四苦八苦している方は多いでしょう。英語となると、さらに多くの壁を感じるかもしれません。聞き手の興味を惹きつけ、集中を保ちながら話すためには、どのような点に注意すべきでしょうか。

本記事では、長期にわたる訓練を必要とせず、誰でも比較的簡単に取り入れられる「聞いてもらえる英語」を話すための具体的なコツを紹介します。これらのテクニックを意識するだけで、あなたの英語は劇的に聞き取りやすくなるでしょう。


聞き手の注意を逸らしにくい英語の話し方の特徴

まず、聞き手が退屈しにくい、魅力的な英語の話し方には、どのような特徴があるかを見ていきましょう。

メッセージが明確である

伝えたい内容に一貫性があり、無駄な寄り道をせずに終始テーマに沿っている話し方は、日本語でも聞きやすいものです。デール・カーネギーは、著書『話し方入門』の中で、人前で上手に話す秘訣として、「人に伝えたいと切望するものがある」ことを条件の一つに挙げています。強いメッセージ性こそが、聞き手の関心を持続させる土台となります。

構成が分かりやすい

話の構成が論理的で分かりやすいことも重要です。例えば、プレゼンテーションの冒頭で結論や全体像、方向性が明確に示されていると、聞き手は最小限のエネルギーで話を追うことができます。日本語の「起承転結」のような構成のルールに沿っていることで、話の流れが予測可能になり、集中力が持続します。

注意を促すキーフレーズがある

話の要所要所にキーワードやキーフレーズを含めることで、聞き手の注意が逸れるのを防ぎ、話の現在地を把握しやすくします。これにより、聞き手は次に何が話されるかを期待しやすくなります。

英語がシンプルで正確である

非ネイティブスピーカーであれば特に、文章を長くしすぎないこと、美しく響かせようと凝りすぎないことが大切です。シンプルで短い文章であれば、文法的な誤りや発音ミスを最小限に抑えられます。長く複雑な文章は、それを正確かつ美しく発音しなければ、伝えるクオリティが大きく低下してしまうリスクがあります。

文型と抑揚が連動している

単調な棒読みではなく、主語、述語、目的語といった文の要素に適切な抑揚をつけることで、英文として聞き取りやすくなります。抑揚によって文の区切りや構造が明確になり、内容の理解を助けます。

重要なメッセージに抑揚が付いている(音として強調されている)

メッセージ性の高い単語やキーポイントは、高めの音程(ハイピッチ)で、忘れずに目立つように発声します。これにより、話し手が何を最も伝えたいのかが、音響的に強調され、聞き手に確実に届きます。

聞いてもらえない英語の要素

反対に、聴衆が自身のPCやスマートフォンを見始めたり、考え事をしたり、眠そうになったりする「聞いてもらえない英語」には、以下のような要素があります。

  • メッセージが不明確: 結局、最も主張したい点がどこにあるのかが分かりません。
  • 構成が分かりにくい: 予兆なく急に例から入るなど、話の方向性や遷移が予測できません。
  • キーフレーズがない: どこが重要な箇所なのか、聞き手が自分で判断しなければならず、疲労を招きます。
  • 英語が複雑で不正確・不自然な箇所がある: 長く複雑な文は聞き取りにくく、非ネイティブにとって文法的なミスや不自然な表現が増えるリスクを高めます。
  • 文章の構造や抑揚が意識されていない: 単調な話し方になり、話の展開が読めず、聞き手の興味が失われがちです。
  • 強調箇所がない: 重要なメッセージが他の情報と同じトーンで話されるため、どこが核心か分かりにくいです。

これらの問題点を改善するため、「メッセージ性」「構成」「キーフレーズ」「シンプルさ」「抑揚」といったポイントを見直すことで、聞きやすさは劇的に改善されます。以下に具体的な改善方法を見ていきましょう。

改善ポイント1:メッセージの明確化(帰着点を決める)

まず、伝えたいコンテンツのメッセージを明確化することが最も大切です。

例えば、「半導体不足の動向についてプレゼンして」という指示があったとします。調査の結果、半導体の種類や地域によって需給バランスがバラバラであることが分かりました。ここで「調べた内容を全て順に読んで英訳する」のは、前述の通り最も聞いてもらえないプレゼンの一つです。

メッセージ性の観点から、「誰が」「何を」知りたいのかを深く考え、帰着点(オチ)を決めましょう。

指示が自動車メーカーの上司からのものであれば、論点は「自社製品が半導体の供給で困るリスクがどの程度あって、どんな対策をすれば良いのか」になるでしょう。経済学部のプレゼンであれば、「半導体の種類・用途・需給バランス」を分かりやすく発表することが求められるかもしれません。

そのプレゼンに求められるもの、自分が盛り込みたいものを検討し、プレゼンの「目的」を具体的に設定し、ピンポイントで帰着点(結論)を固めていくことが大切です。

改善ポイント2:効果的な「構成」(最初の12秒でオチを伝える)

メッセージを効果的に伝達するための「構成」について考えます。

自動車用半導体の供給リスクに関するプレゼンで、調査の結果、数か月後に自社モデル2種が生産できなくなる可能性があることが判明したと仮定します。

人の集中力は12秒程度と言われています(最近では8秒とも)。英語のプレゼンでは、最初の12秒で結論を伝えてしまうことを推奨します。このケースであれば、「該当2モデルは、3ヶ月後から2割の減産になるリスクがあります。一部メーカでは既に今月から生産停止です。」という結論を、まず12秒で述べ切ります。

誰にでも聞き取りやすい簡潔な言葉で、具体的なリスクや背景を開口一番に述べ終えるのです。こうすることで、聞き手はプレゼン全体の「順路」を最初の12秒で把握でき、いわば本の目次を読み終えた状態になります。13秒以降に、プレゼン全体で何を話すかを簡単に述べ、各論(1項目、2項目…)と進み、最後にまとめ(対策など)でプレゼンを終結させます。

構造のポイントは、先に目次を見せ、終始シンプルな展開で進めることです。

改善ポイント3:伝わりやすい「キーフレーズ」の採用

「生産停止」「約3ヶ月後」「突発的な需要増」といった、問題やその背景を端的に指し示す名詞や動詞、フレーズは、短く、シンプルに、響きやすく、聞き慣れた言葉を使うことがポイントです。

「納品できる顧客もいるが出来ない顧客もいる」「いつになるかは分からないがおそらく半年以内」といった、冗長で煮え切らない長い文章が続くプレゼンは、聞き手を疲れさせます。メッセージの要点となるキーポイントには、聞き手が特別聞き取りやすい表現を意識的に採用しましょう。

改善ポイント4:シンプルな英語の使用(非ネイティブの戦略)

非ネイティブスピーカーである私たちは、単語選び、文法、抑揚を間違えるリスクを常に負っています。その中でメッセージを効果的に伝達するためには、シンプルで短い英文で構成することが最も有効な戦略です。

文章の短さやシンプルさは、単語、文法、抑揚の全ての間違いのリスクを低減してくれます。

今やチャットボットも利用できますので、日本語で伝えたい文章が完成したら、例えば「中学生でも分かる英文にして」とチャットボットに翻訳してもらうのも良い方法です。英訳することも念頭に置きながら和文を作成し、英語は極力シンプルに作る意識が大切です。

改善ポイント5:文型と抑揚への意識

英語は、日本語以上に抑揚を意思伝達に利用しています。

抑揚は通常、英文の意味をより通りやすくするために、文節の区切りや、強調したい単語に「揚(ピッチの上昇)」が来るように付けられます。「揚」は他の箇所より高音で、ゆっくり、大きく発音されます。

例えば、”Believe it or not, most of the machines that people in developed nations use were invented during the last 200 years.”(信じようが信じまいが、先進国の人たちが使うほとんのどの機器は、この200年で発明されました)という文章。

この文を単調に読むと、主語が長く、聞き手を惑わせるリスクが高まります。

一方、下記の太字で抑揚の揚を付けると文章の区切りが明確になります。
(区切りの抑揚の揚は「ん??」と聞くときの音程で上がります)
①Believe it or not, most of the machines that people in developed nations use were invented during the last 200 years.

更に、下記2か所に抑揚の揚を付けると、話し手が強調したい部分が明確になります。
(強調の揚は、アクセントは辞書通りで、音量と音程を上げます)
②Believe it or not, most of the machines that people in developed nations use were invented during the last 200 years.

最後に上記①②を合わせると、下記の様になり、文節、強調箇所が明確になり、聞き取りやすくなるというわけです。
(主旨を追うために下線部分も明確に発音されるかもしれません)
③Believe it or notmost of the machines that people in developed nations use were invented during the last 200 years.

プレゼン英語も、抑揚が一文一文適切な箇所に付いていることが、聞きやすくする重要なコツです。世界的に圧倒的主要なアクセントはアメリカ英語ですので、基本的にアメリカ英語の抑揚を基準として習得していくのが、伝わりやすさとしては最も無難な選択と言えるでしょう。

発音は関係ないのか?:文字の発音と単語の発音

ここまで読み進めて、「聞きやすさの話なのに、発音には触れないのか」と思われた方もいるかもしれません。

発音には、①文字の発音(THとSの違い)、②単語の発音(アクセントやシラブル)、③文章の発音(抑揚)というレベルがあります。

前述の通り、**③文章の発音(抑揚)**は、「伝わる英語」のためにトレーニングすることが強く推奨されます。では、①と②は必要でしょうか。

① 文字の発音(THやR/Lなど)

結論から言うと、文字単位の発音(例:TH を S と発音するなど)は、文全体の聞きやすさには実はあまり影響がありません。thought を「トート」と発音しても「ソート」と発音しても、抑揚が合っていればほとんど通じます。

② 単語の発音(アクセントとシラブル)

アクセント(強勢の位置)とシラブル(音節の数)は重要です。例えば、日本語の「ドラム」は「ド・ラ・ム」で3音節ですが、英語の drum はで1音節で、drumという単語は英語ではドラムではなくジャムと言った響きになります。英単語を発する際、日本語のアクセントや音節数で発音すると、聞き手は何を言われたか分からなくなるリスクがあります。

drumのように日本語と英語で響きが大きく異なる単語については、音声を必ず確認し、正しいアクセントとシラブル数を正確に覚える必要があります。影響の少ない単語も多いですが、通じない単語にならないよう、慎重に扱っていきましょう。

おわりに

英語スキルは習得に根気が必要ですが、「伝わりやすくする工夫」は付け焼き刃的にできてしまう部分も多く、使える英語にするための効果が大変大きいです。今回紹介した「メッセージの明確化」「構成の工夫」「抑揚への意識」は、今日からでも取り組めるものです。ぜひ、これらのコツを活用し、あなたの英語を「聞いてもらえる英語」へと進化させてください。

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