はじめに:言語は「使えてなんぼ」
最大のブレイクスルー:「使えてなんぼ」の実感
英語においても中国語においても、私自身にとって最大のブレイクスルーとなったのは、言語は使えて初めて意味を持つものだ(使えてなんぼ)と本気で腹落ちした瞬間でした。
試験対策「頼み」は結局伸び悩みを招く
以前から実用対策の必要性は頭では理解していたものの、常に目の前には試験があり、どうしても学習はスコア重視になりがちでした。結果として点数は出るものの、実際に運用する力は後回しにされ、やがて成長が頭打ちになる。この状態を長く経験してきました。
台湾留学で突きつけられた現実
「なぜここにいるの?」という目で見られた日々
その考えが大きく変わったのが、台湾への留学です。渡航直後の私は、中国語で買い物すら満足にできない状態でした。しかし留学先の筆記試験だけは異様にできてしまい、結果として上級クラスに振り分けられました。クラスメートは流暢に話し、授業中の発言はほとんど聞き取れない。毎日、怪訝な視線を向けられながら席に座る状況は、正直なところ相当なプレッシャーでした。
その場で生き残るための選択
これはまずいと直感的に判断し、私はある行動を取りました。それは、周囲の人が発した言葉をフレーズ単位でひたすら書き取り、翌日までに現場で使える状態にする、というものです。最初の頃は一日100フレーズ以上を書き出していました(画像は帰国後データ化したものの一部です)。意味の理解よりも、まず意思疎通が成立することを最優先にし、アウトプットに全てを振り切った学習でした。当時は無我夢中でしたが、今振り返ると、第二言語習得論で言われる内在化と自動化を、強制的に高負荷で回していたのだと思います。
第二言語習得における4つの認知プロセス
第二言語(第一は母国語)のアウトプットは、一般的に次の4段階を経て進行するとされています。
気づき(Noticing)
最初の段階は、表現の存在を知ることです。単語帳で late は「遅い」という意味だと覚えたり、文章を読んで新しい言い回しに出会ったりする段階にあたります。この時点では、まだ使える状態ではなく、知識として頭に入っているだけです。
理解(Comprehension)
次に、その単語や表現がどのように使われるのかを理解します。be late や it’s getting late のような形で、文脈とともに使い方を把握するフェーズです。ここまで来ると、
試験問題には十分対応できるようになります(対応出来る事自体が壮大な落とし穴です)。
内在化(Intake)
学習の転換点となるのが内在化です。これは、表現を自分自身の生活や感情と結びつける作業を指します。例えば「今日は遅くなるよ」と自分が実際に言う場面を思い浮かべ、I’ll be home late. という形で落とし込む。この段階で初めて、単語は自分の現実と接続され、自分の言葉として機能し始めます。
受験英語、TOEIC、英検などの対策ではここは対応が不十分でもスコアが上がりますが、
日常英会話では結びついていないと、言葉でない、組み立てられない、見当はずれなフレーズが飛び出す
などと言う事がおきます。
統合・自動化(Integration / Automaticity)
最後は、自動的に口から出てくる状態を作る段階です。
ポイントは日本語を見て自然な英語が出てくる事です。
溜め込んだフレーズなどを和文を見ながら英語を出す練習をします。
慣れたらAI英会話などで実践練習すると柔軟性や即応性が付きます。
「瞬間英作文」はこの過程を勧めるトレーニングですが、「内在化」は考慮されていませんので、自身の生活に相性の良いフレーズを抜粋して練習すると「内在化」+「統合・自動化」と出来て良いでしょう。
私がやっていたことの正体
「内在化」+「統合・自動化」に全振り
強い焦燥感の中、台湾で私が行っていた学習は、極めてシンプルでした。身の回りのことだけを対象にして内在化し、翌日には必ず言えるようにする(自動化)。この二点を徹底していただけです。
範囲を広げず、抽象的な表現にも手を出さず、生活に直結するフレーズを自動化することに集中しました。
試験対策学習の落とし穴
「気づき」+「理解」のみ で現場に放り出される
試験対策に特化した学習は、気づきや理解の段階で止まっていても成立します。内在化や自動化を飛ばしても、スコアは上がるからです。そのため、多くの学習者は何が抜けているのかに気づかないまま、実際の現場に放り出されます。そこで戸惑い、それまでの勉強をやり直したり、さらに難しい試験に挑戦したりしますが、本当に必要なのは内在化と自動化なのです。
おわりに:自動化こそが日常会話力を支える
試験から離れ、「使えてなんぼ」という現実に飛び込む勇気
日常会話力を短期間で身につけるために必要なのは、特別な才能ではありません。自分の生活に即した表現を選び、それを翌日には使える状態にまで自動化する。この地味なプロセスを回し続けることが、結果として3ヶ月で生活が回るレベルの運用力につながります。
ちなみに試験勉強はさほどしないけど、洋書を読み漁っている(またはひたすら講義を聞いている)ようなケースも、突然ペラペラと喋り出す事があるパターンです。興味のある方は「インプット仮説」の記事がおすすめです。
試験勉強で積み上げた知識を、使える力に変えるための最後の一歩として、自動化を意識した学習をぜひ取り入れてみてください。
