「The country to the west of A is B」における “to” の意味

――「Aの中」ではなく「Aの外にある」ことを示す前置詞――

英語の地理的表現でよく見かける文の一つに、
“The country to the west of A is B.”(Aの西にある国はBです)
という言い回しがあります。

ここで注目すべきは、なぜ “to the west of” という形で “to” が使われているのか、という点です。
一見すると “in the west of A” としても意味が通じそうですが、英語のネイティブ感覚ではこの2つの表現には明確な違いがあります。


“to” が示すのは「外側にある方向」

前置詞 “to” の基本的な役割は「方向」や「到達点」を示すことです。
たとえば、

  • go to school(学校へ行く)
  • look to the sky(空の方を見る)
    といった例では、いずれも「何かに向かって動く」イメージが中心にあります。

同じように、“to the west of A” では、
「Aから見て西の方向に位置している」という相対的な位置関係を示しています。

つまり、“to the west of” は「Aの外側で、Aを基点に西へ向かった先にある場所」を指す表現なのです。


“in the west of” との違い

一方、“in the west of A” という表現は、
「Aという領域の内部にある西側の一部」という意味になります。

たとえば:

  • Kyoto is in the west of Japan.
     (京都は日本の西部にあります)

この場合の “in” は「~の中に」という意味で使われ、
A(日本)の中の「西の地域」に焦点を当てています。

しかし、“to the west of A” は、Aの中ではなくを指します。
したがって、

  • Korea is to the west of Japan.
     (韓国は日本の西にあります)
    のように、Aとは別の国・地域を指す場合に用いるのが自然です。

この違いをまとめると、次のようになります。

表現意味使われる場面
in the west of AAの内部の西側国内・地域内の説明
to the west of AAの外側で西の方向他国・他地域との位置関係

“to” は「方向」だけでなく「隔たり」をも示す

“to” はもともと「~へ向かう」という動きの方向を表しますが、地理的な文脈では「隔たり(距離)」や「外側への広がり」を示す働きも持っています。

たとえば、

  • a small island to the south of Okinawa
     (沖縄の南にある小さな島)
    のような文では、島が沖縄から少し離れた場所にあるという感覚が伝わります。

つまり、“to the west of A” は「Aの外側に離れて存在するB」という独立した存在感を伴う表現なのです。


直感的に捉えるなら

ネイティブの感覚では、“in” は「内部の一部」、
“to” は「外にあって、向こう側に広がる方向」というイメージです。

たとえば地図を思い浮かべてください。
Aという国の境界線の中で話しているなら “in the west of A”。
Aの国境の外にある別の国を指すなら “to the west of A”。

このように、“to” は空間的な「離れ」を自然に表してくれる前置詞なのです。


まとめ ―― “to the west of A” は「外側の方向」

  • “to” は方向や外側への広がりを示す前置詞
  • “to the west of A” は「Aの外側で西の方向にある」
  • “in the west of A” は「Aの中の西部にある」

つまり、

“The country to the west of A is B.”
は「BはAの領域の外側にあり、Aから見て西に位置している国だ」ということを明確に伝える表現なのです。

英語では、わずかな前置詞の違いが位置関係の精度を大きく左右します。
“to the west of” という表現には、AとBが別の存在であること、そしてその間にある「距離」と「方向」が自然に込められているのです。

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